- ビラ配り(Do You Need a Haircut ? )
- ハラハラ、ドキドキ(The Merry-Go-Round)
- 根くらべ(Hide-and-Seek)
- 10分(Just Ten Minutes)
ビラ配り(Do You Need a Haircut ? )
サトシ:おはようございます! ヘアカットはいかがですか? K'sサロンでお待ちしております。11時から9時まで営業しています。
ナレ(サトシ)
この春、ヘアスタイリストの研修を終えて、K's サロンという美容院で働き始めた。まだヘアカットはさせてもらっていない。実は、お客さんのシャンプーもさせてもらってない。一度だけ床に落ちた髪の毛を掃除しただけ。たいていは駅前でビラを配っている。
友人:あら、サトシ! サトシじゃないの?
ナレ(サトシ)
美容学校時代の友人だ。
友人:K's サロンで働いているんだって?
サトシ:まあね!
ナレ(サトシ)
K's サロンは、有名なヘアスタイリストのコウスケさんが経営している。そこで働けるなんて光栄なことだ。だから友人にもチラシを渡したんだけど…
友人:あんなところで働くなんてどうかしてるわ!
サトシ:えっ?
友人:カットさせてもらえるまで、5年はかかるって聞いたわよ。最初の6ヶ月で辞めちゃう人が多いんでしょ。
サトシ:それ、本当?
友人:そうよ。それに、あの有名なヘアスタイリストのコウスケさん…、お店にだって来ないんでしょ? 俳優さんやモデルさんとの仕事が忙しすぎて。
ナレ(サトシ)
友人のいう通りだ。働き始めて1ヶ月以上になるけど、お店でコウスケさんに会ったことはない。
友人:辞めちゃえば?
サトシ:えっ? いやだよ!
友人:お客さんのカットやセットをするのと、ビラを配るだけとどっちがやりたいの?
サトシ:そりゃ…
友人:私も美容院で仕事してるけど、もうカラーの手伝いもやったわよ。
サトシ:本当? いいなー!
友人:うちのお店で働きたかったら、オーナーに話してみるけど。
ナレ(サトシ)
正直言っていい話だ。あまりにもいい話だったので、ビラを何枚か落としたことにさえ気づかなかった。このままK's サロンにいても、この先ずっとビラ配りかもしれない。たぶん、おれがやるべきことは…
コウスケ:おい! 何やってるんだ? うちのビラを落とすなんて。気をつけてくれよな。
サトシ:は?
友人:あ、あなたは…
サトシ:コウスケさん!
コウスケ:ぼくも昔ビラを配ったものさ。でも落としたことはなかったよ。気をつけていたからね。さあ、拾うのを手伝って。
サトシ:はい、もちろんです!
ナレ(サトシ)
コウスケさんと一緒にビラを拾い始めた。
コウスケ:ビラ配りなんて楽しくないよな?
サトシ:ええと…
コウスケ:ぼくも駆け出しのころそう思っていたよ。カットをやりたくてね。でも今はね、ビラ配りをやってよかったと思っている。
サトシ:本当ですか?
コウスケ:本当さ。いい美容師になりたかったら、たくさん練習しなくちゃならない。そのためにはたくさんのお客さんがいないとな。
サトシ:だから、ビラ配りは大切なんですね!
コウスケ:まさにその通り! ま、心配するな。ビラ配りが永遠に続くわけじゃないから。わかったかい? もう行かなくちゃ。しっかりやれよ!
ナレ(サトシ)
そう言って、コウスケさんは去って行った。
友人:うわー、コウスケさんっていい人なんだ!
サトシ:そうだな。
ナレ(サトシ)
わかった、辞めないぞ。K's サロンでずっとがんばろう。
村上春樹『1973年のピンボール』の一節を思い出しました。
「どんなに月並みで平凡なことからでも、必ず何かを学べる。どんな髭剃りにも哲学はある」
たしかに…そう思います。
ハラハラ、ドキドキ(The Merry-Go-Round)
ひなの:うわー…ああ…。こうへい、見て、あのジェットコースター。すごく速い!見ているだけでこわくなっちゃう!
こうへい:ひなの、顔が真っ青だよ。大丈夫?
ひ:う、うん、大丈夫。
こ:遊園地に来るのはよくなかったみたいだね。
ひ:ううん!私、遊園地好きだもの。
こ:そうなの? でもまだ何も乗ってないよ…。そんなに怖がって。
ひ:そうだけど。想像力が豊かなのよ。乗り物を見てるだけで、乗ってる気分になっちゃう。想像が止まらないのよ…
こ:向こうには、あんまり怖くない乗り物があるよ。ちょっと見てみよう。
ナレ(ひなの)
正直言って、遊園地はあまり好きじゃないの。ジェットコースターとか他のハラハラする乗り物が怖くて。こうへいはジェットコースターが好きだって言ってたし、一緒に乗りたかったんだけど。でも乗ったら、たぶん気持ち悪くなって、こうへいに迷惑がかかっちゃう。ああ、どうしよう。
こ:あの乗り物はどう?
ひ:メリーゴーランド?
こ:そう。速くないし、安全だよ。
ひ:そうね。乗ってもいいかもね。子どものころ、よく乗ったわ。
こ:よかった!
ひ:でも、待って。こうへいは乗りたいの? メリーゴーランドはジェットコースターほどドキドキしないでしょ。
こ:実は、メリーゴーランドってすっごくハラハラするんだよ! 心臓がドキドキすること間違いなし。
ひ:冗談でしょ?
こ:冗談じゃないよ。さあ。すいません、メリーゴーランドの券一枚ください。
ひ:一枚? こうへいは?
こ:僕は乗らないよ。ここで待ってる。
ひ:えっ? なんで?
こ:後でわかるよ。さあ乗って。
ナレ(ひなの)
こうへいの言う通りにして、メリーゴーランドの馬に乗ってみた。メリーゴーランドはゆっくり動き出した。こうへいが手を振っているのが見える。私も手を振る。でもメリーゴーランドはどんどん速くなって、こうへいは見えなくなった。そしてまたこうへいが見えた。
こ:ひなの!見て!
ナレ(ひなの)
見ると、こうへいが変な顔をしていた。次に見たとき、こうへいは手を振りながら飛び跳ねていた。こうへいが笑わせてくれた。
こ:これはどう?
ひ:おもしろいけど、ちょっと恥ずかしいよ…
ナレ(ひなの)
こうへいはいつも私を笑わせるようなことをしてくれる。私はハッピーになる。今度は何をするのかな? でも…
ひ:こうへい? どこ?
ナレ(ひなの)
急にこうへいがいなくなった。これもおふざけ? こうへいを探したけれど、見つからない。やっとメリーゴーランドが止まった。急いで降りたけど、こうへいはいない。待つのがいやになって、私を置いて行っちゃったのかな。急に泣きたくなった。心臓がドキドキした。そのとき…
こ:サプライズ!
ナレ(ひなの)
振り向くと、アイスクリームを二つ持ったこうへいがいた。
こ:どう? こうへい式メリーゴーランドは?
ひ:うーん、サイコーね!
勝手にやってー!
訳してて恥ずかしいの、なんのって!
根くらべ(Hide-and-Seek)
女の子:もういいかい?
父:まあだだよ!
女の子:早く! なんでそんなに遅いの?
父:おい、見ちゃダメだぞ! 目を閉じて、10まで数えて。
女の子:わかった、わかった、数えるよ。1,2,3,4…
ナレ(女の子)
パパと公園に来ていて、かくれんぼをしているんだけど、パパは隠れるのがすごく上手で、いつもなかなか見つけられないの。
父:オッケー。もういいよ!
女の子:やった。見つけるからね!
ナレ(女の子)
この前、パパはベンチの下に隠れていた。たぶん、今度はあの大きな木の後ろにいるんじゃないかな。
女の子:パパ、そこにいるんでしょ? 出てきてよ!
男性:シーッ!
ナレ(女の子)
突然、大きなカメラを持ったおじいさんがあらわれた。
女の子:あ、ごめんなさい。パパを探しているの。
男性:大丈夫だよ。かくれんぼしているのかい?
女の子:そう!
男性:わしもかくれんぼをしているところなんだよ。
女の子:そうなの? 誰とかくれんぼしているの?
男性:実は、隠れているんじゃなくて、友だちを探しているんだよ…
女の子:でも、隠れているみたい。友だちを探すなら、歩き回ってあちこち探さないと!
男性:あのね、友だちを探すのに、動き回る必要はないんだよ。待っていれば、友だちの方からやってくることもあるんだ。
女の子:よくわからないわ。
男性:あのね、かくれんぼっていうのは、待っているゲームなんだ。一番長く待てる人が勝つんだよ。
女の子:待っているゲーム?
男性:隠れている人は、音を立てずに待つんだ。でもずーっと静かにしているっていうのは不可能だろう。
女の子:なるほどねー。だからおじいさんは友だちが音を立てるのを待っているのね!
男性:その通り。音を聞けば、友だちがどこにいるかわかるんだよ! わしはいつもこのやり方で勝つんだ。
女の子:本当?
男性:そうだよ。ためしてごらん。目を閉じて、まわりの音に耳を澄ませる。
女の子:わかったわ。
ナレ(女の子)
息を止めてみる。とても静かな世界。そのとき…
(シャッター音)
男性:ほら、いた! 見つけたぞ!
女の子:何だったの?
男性:シギだよ。シギはたいてい水辺に棲んでいるから、市内で見ることはめったにないんだ。
女の子:シギ? それ、どんなの?
ナレ(女の子)
おじいさんはカメラの画面を見せてくれた。長いくちばしを持った小さい鳥が見えた。
女の子:鳥とかくれんぼしていたの?
男性:そうだよ。鳥は隠れるのが上手だからね。
女の子:鳥とかくれんぼなんて楽しそうね。
男性:楽しいよ! じゃあ、もう行かなくちゃ。パパが見つかるといいね。
女の子:ありがとう。さようなら!
ナレ(女の子)
おじいさんは待っていて鳥を見つけた。私ももうちょっと待てば、パパを見つけられるかな?
父:ハクション!
ナレ(女の子)
急いで上を見た。
女の子:あーっ! パパでしょ! みーつけた! 木の上にいたんだ!
父:あーあ! 見つかっちゃった。いい隠れ場所を見つけたと思ったのに。
女の子:やったー! 勝ったー!
ナレ(女の子)
やさしいおじいさんのおかげで、パパを見つけた。私の勝ち!
関根家のかくれんぼ(笑) さすがです! 参考にしてみては?
バードウォッチングはいいですね。野鳥公園に行きたくなりました。カワセミを見てみたい!
10分(Just Ten Minutes)
夫:(咳)具合が悪いので、仕事の前に医者に行きます。すみません。では失礼します。
妻:大丈夫? 一日休んだら?
夫:休めないよ。午後、大切な会議があるんだ。
妻:熱はあるの?
夫:ないけど、そのうち出るかもね。風邪を引いたみたいだ。医者で薬をもらうよ…(咳)
妻:本当に大丈夫? ちょっと、何してるの?
夫:今日はゴミの日だから、ゴミをまとめてるんだよ。(咳)
妻:寝てなきゃだめよ。
夫:でも収集車が8時に来るから。
妻:大丈夫。今日は私がゴミを出すから。
夫:本当? ありがとう。
妻:でも、なんで風邪ひいちゃったのかしらね。
夫:たぶん、空気が乾燥しすぎているからだよ。
妻:乾燥してる?
夫:ぼくの顔を見てよ。肌が乾燥しているだろ?
妻:ええ、そうね。
夫:くちびるが乾きすぎちゃって、笑うたびに痛いんだよ。一日中、顔に蒸しタオルを載せていられたらいいのに!
妻:かわいそうに。そうだ、いい考えがある! 私の保湿用フェイスマスクを使うといいわ。
夫:フェイスマスク? 女性用だろ?
妻:男の人も使うらしいわよ。
夫:何のために?
妻:お肌を健康に保つために。
夫:ぼくはいいよ。必要ないから…。誰かに見られたら恥ずかしいし。
妻:誰も見ないわよ。ここにいるのは私だけだし。気持ちいいわよ、たったの10分間で。
夫:肌が悪いわけじゃないよ。問題はこの咳なんだよ!(咳)
妻:医者に行けば咳の薬はもらえるけど、お肌は私にまかせて。いい? 顔にマスクを載せるわよ。
夫:本当にやるの?
妻:もちろんよ! 静かにして。髪が顔にかからないようにして。さあ、じっとして。
夫:あー!冷たい!
妻:すぐ気持ちよくなるから。
夫:うん。
妻:どう?
夫:気持ちいいね。
妻:よかった! じゃ、10分間リラックスしててね。
夫:10分? わかった…。
ナレ(夫)
フェイスマスクも悪くないな。男性が使うのもわかる気がする。うーん、いい香りだ…。バラかな? ラベンダーかな? あれ? 咳が止まったぞ。医者に行かなくて済むかも!
夫:おっと! 居眠りしちゃった! 何時?
妻:8時ちょっとすぎ。
夫:8時すぎ? ゴミだ!
妻:ゴミ? あっ! 忘れちゃった!
夫:えっ? 収集車に追いつくかな?
妻:待って、そのまま外に出ないでー!
夫:おーい、待ってくれー! これも持って行ってください!
作業員:はい、いいですよ。それ、どうしたんですか?
夫:は? なんのことですか?
作業員:顔に何かついてますけど。
夫:おっと、フェイスマスクだ! これもお願いします。10分たったからもうはがしていいんだ。
最近は男性もパックとかエステとかやっているようですね。私はホット・アイマスクなら愛用してます。