エンジョイ・シンプル・イングリッシュ
かっぱの傷薬
かっぱの傷薬 Kappa's Miracle Medicine
昔々、小さな村の医者が診察を終えて家路についていました。
馬に乗って橋を渡っていると、馬が急に止まりました。医者はまわりを見回しましたが、夕暮れで暗くなっていたので、よく見えませんでした。
そのとき、馬が後ろに歩き始めたのです。どうやら、後ろから引っ張られているようでした。
医者は注意深く後ろを見ると、橋の下から手が出ていて、馬の尾を引っぱっていたのです。
「かっぱに違いない!」
医者は刀を抜き、馬の尾を引っぱっていた腕を切り落としました。
「ぎゃー!」
と声がして、何かが水に落ちる音が聞こえました。
医者は馬から飛び降りて、あたりを見ると、緑色の腕が落ちていました。手には水かきがありました。医者はその腕を拾い上げ、家に持って帰りました。
その晩医者が寝ていると、誰かが戸を叩く音がしました。
「ああ、急患だな」
と医者は思い、戸を開けてびっくりしました。悲しい顔をしたかっぱがいたのです。そこに立っていたかっぱには片腕しかありませんでした。
医者はかっぱに向かって怒鳴りました。
「今夜、馬の尾を引っぱったのはお前だな! こんなところで何をしておる?」
かっぱは言いました。
「あの、ごめんなさい。馬を川の中に引きずり込もうとしたら、腕を切り落とされました。ちょっとふざけただけだったのです。でも、片腕だけでは泳ぐことができません。泳げないと、十分な食べ物を取ることができなくて死んでしまいます。腕を返してもらえませんか?」
かっぱは何度も何度も頭を下げました。
医者は河童を気の毒に思って言いました。
「もう二度といたずらをしないと約束するなら、腕を返してやろう。でもなぜ返してほしいのか? 腕はくっつかないだろうに」
「特別な薬があるのです。それを使って腕をくっつけます。私の腕はもと通りになるのです。腕を返してくれたら、その薬の作り方を教えます」
医者はこの特別な薬に興味を持ったので、かっぱに腕を返してやりました。かっぱはどの草を使うか、どうやって薬を作るのかを医者に教えました。そして、河童の腕はもと通りになり、帰っていきました。
翌朝、一人の農民が腕を折ったと医者のところへやってきました。医者はかっぱの薬を作って、農民の腕に使ってみました。するとすぐに腕はよくなりました。
それ以来、医者はかっぱの不思議な薬を使ってたくさんの人を治しましたとさ。
めでたし、めでたし。
意外に信用できるんですね。先週の末の息子とはちがうようで…。