エンジョイ・シンプル・イングリッシュ
日本の伝統的笑い!落語
『だくだく』
ある泥棒のお話です。
この泥棒は、あまり腕のいい泥棒ではありませんでしたが、そうなりたいとは思っていました。泥棒のかっこうも好きでした。ときどき鏡に自分を写して言いました。
「女性は泥棒が好きなんだ」
ある晩、泥棒は浅草を歩いていました。盗みに入れそうな家を探していたのです。やがて大きな屋敷を見つけました。戸口が少しだけ開いていました。
「おお!このでかい屋敷に泥棒に入ろう。そうすれば金持ちになって女性にごちそうできる。ハッハハ」
泥棒は家の中に入りました。家の中は高そうなものでいっぱいだったので、泥棒はうれしくなりました。
「おお、このタンスは立派だな。何が入っているのか見てみよう」
泥棒はタンスの引き出しを開けようとして、何かおかしいことに気が付きました。
「おい、このタンスは絵じゃねえか!あの時計も絵だ!この家にあるものはみんな絵だ!ふんっ!これじゃあ何も盗めねえよ」
泥棒はたいそう腹を立てましたが、ふと、この家の主人のことを考えました。
「ああ、この家の主人は画家でたいして金がないんだな。だから何も買えないんだ。でもまわりの人に金持ちと思われたくて、立派な家具を描いたってわけか。ハハ、ばかなやつだなぁ。
この家には何も盗るものはないが、わざわざ浅草までやってきたんだ。まだ帰るわけにはいかねぇ。
うーん、おれは芝居が好きだから、泥棒の役でもやってみるか」
そこで泥棒は絵のタンスの前に行き、芝居を始めました。泥棒はタンスを開けるふりをしました。
「ああ、こりゃいい着物だ。高価な時計もある。おや、小さい箱だ。中は何かな?おや、ダイヤの指輪だよ。まぶしすぎて、目をやられそうだ。ハッハハ」
泥棒は芝居を続けました。近くでこの家の主人が寝ているとも知らないで。泥棒は楽しくなってきて、声もだんだん大きくなっていきました。
やがて家の主人は目を覚まし、何が起こっているのかわかりました。
(泥棒め!捕まえてやる!気づかれないように近づこう。そして、この棒でひっぱたいてやる)
この家にある本物は、この棒だけでした。他はみんな絵でした。泥棒は帰ろうとしているところでした。主人は棒を手にゆっくりと近づいていき、泥棒をひっぱたきました。
「エイッ!」
「痛え~!誰だ!」
「この家の者だ!」
「よくもたたいたな!その棒は絵じゃないのか?」
「いや、これは本物だ。お前みたいな泥棒が来たときのためにとっておいたのだ!」
「その棒は絵じゃないのか?」って、面白いからいいんですけどね。ただ、時代設定がよくわかりません。この衣装の時代に「ダイヤの指輪」って…