エンジョイ・シンプル・イングリッシュ
力太郎
『力太郎』後編
むかしむかし、子どものいない老夫婦がおりました。二人とも風呂に入ったことがありませんでした。そこである日、二人はあかを落とし、そのあかで人形を作りました。不思議なことに、突然その人形は人間の赤ん坊になりました。老夫婦はたいそう喜び、赤ん坊を力太郎と名付けました。
力太郎は大きくなって、たくましい若者になりました。ある日、力太郎は家を出ることにしました。自分にどれだけの力があるか知りたかったのです。
途中、力太郎は二人の強い男に会いました。名前は、御堂太郎と石こ太郎でした。二人は力太郎のお供になって、一緒に旅をしました。
しばらく歩くと、三人は町に出ました。大きな町でしたが、通りにはだれもいませんでした。
三人は長者の家のそばを歩いていました。そこで、若い娘が一人で泣いているのを見つけました。
「どうしたのですか? どうして泣いているのですか?」
力太郎は娘に尋ねました。
娘は答えました。
「毎日鬼がこの町にやって来て、人間を食べるのです。今日は私が食べられるのです」
娘はまた泣き始めました。
「もう心配いりません。私たちがその鬼を退治しますから」
三人の強い男たちは、鬼が現れるのを待ちました。真夜中すぎ、妙な物音が聞こえました。そして、大きな大きな鬼が通りにやってきました。山ほどの大きさです。
「お前なんかこわくないぞ!」
と言って、御堂太郎は鬼めがけて走っていきました。御堂太郎は鬼の左ひざを何度も何度も叩きました。鬼は怒って御堂太郎をつまみ上げ、大きな大きな口の中に放り込みました。
「次はおれの番だ!」
石こ太郎は鬼めがけて走っていき、右のひざを叩きました。鬼はカンカンに怒りました。鬼は石こ太郎もつまみ上げ、口の中に放り込みました。
「大丈夫だぞ! 二人とも、すぐに出してやるからな!」
力太郎は大きな鉄の棒で鬼を叩きました。鬼は力太郎を捕まえようとしましたが、ひざが痛くてたまりません。力太郎は素早く動き回り、何度も何度も鬼を叩きました。力太郎が素早く飛び回るので、鬼は力太郎を捕まえることができませんでした。しかし、鬼は大きな鉄の棒をつかんで、鉛筆でも折るかのように真っ二つにしてしまいました。
今度は力太郎がカンカンに怒りました。力太郎は飛び上がって、鬼の腹を叩きました。すると、御堂太郎と石こ太郎が鬼の大きな大きな鼻から飛び出してきました。今度は力太郎が鬼をつまみ上げ、空高く放り投げました。鬼は落ちてきて、体を強く地面に打ちつけました。
「お前さんは、おれより強い。もう二度と現れませんよー」
と鬼は言って、走り去りました。
町の人々はたいそう喜び、力太郎と二人の強い男のまわりで踊りました。長者は言いました。
「娘の命を救ってくださり、ありがとうございました」
長者は力太郎に娘と結婚するようにお願いしました。御堂太郎と石こ太郎は、長者の二女、三女とそれぞれ結婚しました。
力太郎は年取った父母を町に呼び寄せ、みんな末永く幸せに暮らしました。