エンジョイ・シンプル・イングリッシュ
初夢長者 後編
初夢長者 後編
昔々、お正月に父親に家を追い出された若者がおりました。
若者は父親に初夢について聞かれたのですが、若者は答えようとしませんでした。父親は怒って、若者に家を出るように言ったのでした。
若者が山道を歩いていると、天狗に出会いました。
若者は天狗から不思議な蓑と傘をもらい、それを使って遠くに飛んで行きました。そして、鬼のほら穴の前に着きました。若者は鬼にどうしてここに来たのかを話しました。
鬼は尋ねました。
「どんな初夢だったのか?」
「ごめんなさい。たとえ鬼さんでも話すことはできません。でも、とてもよい夢でした」
「ほう。ますます夢が知りたくなってきた。夢の話をしてくれたら、この不思議な生死の針をやろう。これを使えば、どんな病人も治せるし、死んだ人間を生き返らせることもできるのだ。さあ、夢の話をしてみよ」
「それではお話しましょう。でもその前に、その針を見せてください」
鬼は針を若者に渡しました。若者はすぐに言いました。
「私を遠くに飛ばしておくれ!」
次の瞬間、若者はいなくなっていました。
今度は、若者は東の長者の庭に着きました。屋敷の部屋には重い病気の娘がおりました。屋敷の者が若者に言いました。どんな医者に診てもらってもよくならないのだと。
若者は東の長者に言いました。
「私が娘さんを治します」
そして、生死の針を使いました。
急に娘の顔色に赤みが差しました。不思議なことに、娘はよくなりました。
東の長者はたいそう喜んで言いました。
「そなたは娘の命を救ってくれた。どうか娘と結婚してくだされ」
若者は東の長者の娘と結婚して幸せになりました。
国の反対側では、西の長者の娘が病気になっていました。西の長者は不思議な針を持った若者のことを聞きつけ、若者に会いに来て言いました。
「うちの娘も病気なのじゃ。どうか不思議な針で娘を助けてくれないか」
そこで若者は西の長者の屋敷に行き、不思議な針を使ったところ、娘は元気になりました。
西の長者はたいそう喜んで、若者に娘と結婚してほしいと頼みました。
こうして若者は、ひと月の半分を東の長者の息子として、残りの半分を西の長者の息子として過ごすことになりました。
若者は初夢で、両方の長者の息子になっていたのでした。豊かで幸せに暮らす夢を見て、それが現実になりましたとさ。
「とてもよい夢を見ました」って…。
そりゃ、家を追い出されてもぜんぜんOKよね。3枚のイラストを見ても、なんかちゃっかりした顔してるわ。