エンジョイ・シンプル・イングリッシュ
『力太郎』前編
『力太郎』前編
むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。どういうわけか、二人は風呂に入ったことがありませんでした。二人はとても汚れていました。ある日おじいさんが言いました。
「わしらも年をとった。子どももおらんし、持っているものと言ったら、肌についたあかだけだ」
「その通り。それにとてもさみしいねぇ。あかを全部落として、それで人形でも作りましょうか」
二人はあかで、赤ん坊の人形を作りました。突然、人形は人間の赤ん坊になりました。二人はたいそうおどろきました。
老夫婦は赤ん坊を力太郎と名づけ、愛情を込めて育てました。赤ん坊はよく食べ、どんどん大きくなりました。力太郎は、たくましい若者になりました。
ある日のこと、力太郎は言いました。
「父さん、私は旅に出たいのです。自分がどれだけ強いのか知りたいのです」
力太郎は大きな鉄の棒を持って旅に出ました。
しばらく歩くと、背中に何かを背負った男に会いました。それは木製の寺で、幅5メートル、長さ5メートル、高さが5メートルもありました。男は背負った寺で道をふさぎました。力太郎は男を押しのけました。男はたいそう怒って言いました。
「ばかなまねをしたな。おれはこの国で一番強い男、御堂太郎だ」
力太郎は言いました。
「どっちが強いか確かめよう」
御堂太郎は力太郎めがけて突っ込んできました。しかし、力太郎は御堂太郎をつまみ上げ、高い木の方へ投げ飛ばしました。御堂太郎は叫びました。
「おーい、助けてくれー。助けてくれたら家来になります」
御堂太郎は木の高いところに引っかかっていました。力太郎はその木を地面から引っこ抜き、御堂太郎を助けました。
二人はそろって旅に出ました。すぐに二人は、大きな岩を手でこなごなにしている男に出会いました。その岩の破片が二人の方に飛んできました。力太郎は強い息を吹きかけて、その岩を吹き飛ばしました。その岩は男のところへ飛んでいき、頭にあたりました。男はかんかんに怒りました。
「おれに岩を投げつけたのは誰だ。おれはこの国で一番強い男だぞ」
男は二人の方へ走っていきました。力太郎は男をつまみ上げて、岩に向かって投げつけました。
とても強く投げつけたので、男の頭は岩にめり込んでしまいました。男は岩から頭を引き抜こうとしましたができませんでした。
力太郎は男を岩からひっぱり出し、家来にしました。男の名前は石こ太郎でした。三人はそろって旅をしました。
すぐに大きな町に出ました。しかし、町はどうも様子がおかしいのです。通りに人の姿はなく、家の戸も窓も閉じたままでした。