エンジョイ・シンプル・イングリッシュ
見るなの座敷
見るなの座敷 The Forbidden Room
むかしむかし、小さな村に働き者の木こりが住んでいました。
ある日、木こりは道ばたに小さな鳥を見つけました。うぐいすでした。うぐいすはけがをしていました。
「かわいそうな小鳥よ。助けてあげよう」
木こりはうぐいすを家に連れて帰りました。
2~3日すると、うぐいすは元気になったので、木こりはうぐいすを山に返してやりました。
何日かして、木こりは仕事で山に行き、道に迷ってしまいました。
「どうしよう」
木こりは歩き回りました。とうとう日が暮れて、暗くなってしまいました。そのとき、灯りが見えました。
「助かった! あの家に行って助けてもらおう」
木こりが灯りの方へ歩いて行くと、そこはお城でした。門を叩いて言いました。
「こんばんは。私は木こりです。日が暮れて、道に迷ってしまいました。今晩泊めてください」
門は開いて、若い娘が出てきて言いました。
「お入りなさい。どうぞ泊まっていきなさい」
娘はお城に一人で住んでいました。娘は木こりにごちそうを出しました。木こりはたいへん喜んで、一晩、二晩、三晩と泊まりました。四日目に、木こりは娘の夫になりました。二人は大きなお城で幸せに暮らしました。
ある日のこと、娘は言いました。
「今日は町に一人で行かなくてはなりません。ここでお待ちください。一番上の階にはあなたが見たことのない部屋が12あります。今日は見てかまいません。でもどうか二番目の部屋だけは見ないと約束してください」
「もちろん、約束します」
と木こりは言いました。
娘が出かけると、木こりは一番上の階に行きました。
「二番目の部屋は見てはいけないけれど、他の部屋は見てみよう」
木こりは戸を開け始めました。最初の部屋を見てみると、新年の松の木が高く、青々としていました。
「おお、これはすばらしい!」
木こりは二番目の部屋は入らずに通り過ぎて、三番目の部屋に入りました。そこには花をたくさんつけた桜の木がありました。
「これは見事だ! 三月にちがいない!」
木こりは面白くなってきて、次から次へと戸を開けていきました。
四番目の部屋は四月のツバキ、五番目の部屋は五月のあやめの部屋でした。各部屋にはその月の花や木がありました。
しばらくすると、木こりは二番目の部屋が見たくなりました。
「ちょっとだけ見てみよう」
木こりは戸を開けました。中には美しい花をつけた梅の木がありました。そこは二月でした。木にとまったうぐいすが鳴いていました。
うぐいすは木を飛び立ち、木こりの足元に舞い降りました。すると突然、うぐいすは木こりの妻の姿に変わりました。
「二番目の部屋は見ないでくださいと言ったのに…」
そう言うと、妻はうぐいすの姿に戻り、山の方へ飛んで行ってしまいました。お城は消え、木こりは山の中に一人立っていました。
「決して見てはいけない」シリーズ。ツルの恩返し、浦島太郎…。まだまだありそうですね。