英検1級・TOEIC900点からのNHK語学

英語講師です。通訳案内士試験合格しました。

エンジョイ・シンプル・イングリッシュ日本語訳『赤い蝋燭と人魚』第2話

 

エンジョイ・シンプル・イングリッシュ

赤い蝋燭と人魚第2話

 

 

 

赤い蝋燭と人魚 第2話

 

人魚の娘は大きくなって、見かけが人間とはちがうことを気にするようになり、あまり外へ出なくなりました。けれども娘を見た人たちはみな、その美しさにおどろいていました。娘を一目見るために、老夫婦の店にろうそくを買いに来る人さえいました。

 

ある日のこと、おじいさんがいつものようにろうそくを作っていると、人魚の娘はおじいさんのところへやってきて言いました。

「いいことを思いつきました。おじいさんが作ったろうそくに絵を描いてもいいかしら。そうすればろうそくはもっと売れるようになるでしょう」

「それはいい。ためしにやってごらん」

 

人魚の娘は描き始めました。誰も娘に絵を教えたことはありませんでしたが、娘は白いろうそくに赤い絵の具で魚や貝、海藻などの見事な絵を描きました。

 

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おじいさんはたいそうおどろきました。その絵には、不思議な美しさがありました。

「見事な絵のはずじゃ。この娘は人魚なのだから…」

 

赤い絵のろうそくはすぐに有名になり、大人も子どもも買いに来ました。お店はたいへん繁盛しました。

 

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ちょうどこのころ、ある話が広がりました。それは、

「あのろうそくはどんな嵐からも船を守ってくれる。けっして溺れることはない」というものでした。

 

赤い絵のろうそくは飛ぶように売れました。おじいさんは朝から晩まで一生懸命働いて、ろうそくを作りました。人魚の娘はその横に座り、手の痛みをこらえて絵を描いていました。

 

老夫婦のやさしさを思うと、人魚の娘の目は涙でいっぱいになりました。娘もまたやさしい心を持っていました。

「人間ではない私を育ててくださって、心から感謝しています。どんなに感謝してもしきれません」

 

ろうそくのうわさは遠くの村まで広がりました。漁師や船乗りたちは、はるばる遠くからその特別なろうそくを買いに来ました。ろうそくを買って山に登り、神社でお参りしてろうそくに火をともし、短くなるのを待ちました。それからろうそくを持って帰るのでした。

 

ですから、山の上の神社は昼も夜もつねにろうそくの火でかがやいていました。夜、海から見ると、それは特に美しい眺めでした。

 

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神社の神様のお力はすばらしいと、たちまち有名になりました。神社の神様は広く知れ渡るようになりましたが、ろうそくの絵を描いている娘のことは誰も気にかけませんでした。ですから、娘が働きすぎていても、心配してくれる人はいませんでした。

 

人魚の娘は疲れていました。月のかがやく晩、娘は窓の外を眺めて泣きました。北の青い海が恋しくなりました。

 

そんなある日のこと、南から欲深い商人がやってきました。何かおもしろいものを見つけに北にやってきたのです。商人はそれを南に持ち帰って、金もうけをしようとしていました。

 

ああ…。