エンジョイ・シンプル・イングリッシュ
かちかち山 前編
かちかち山 前編
昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは畑で野菜を育てていましたが、夜にはタヌキがやってきて、たくさんの野菜を食べてしまいました。こんなことが毎晩のように起こりました。おじいさんはたいそう腹を立て、わなを仕掛けることにしました。
ある朝、おじいさんが畑に行ってみると、わなにタヌキが掛かっていました。タヌキはおじいさんに言いました。
「どうか放してください。もう二度と悪いことはしません、約束します」
けれどもおじいさんはタヌキを信じることはできませんでした。おじいさんはタヌキを長い縄で縛り上げ、家に連れて帰りました。
おじいさんはおばあさんに言いました。
「今夜は餅の入ったタヌキ汁にしよう!」
それからおじいさんは天井に金具をつけ、長い縄をかけました。おじいさんは縄を引き上げ、タヌキをぶら下げました。
おじいさんが野菜畑に出かけると、おばあさんは杵と臼で餅をつき始めました。タヌキは弱った声で言いました。
「親切なおばあさん、もう二度と悪いことはしません、約束します。どうか放してください」
おばあさんは言いました。
「すまないが、それはできないよ」
おばあさんはまた餅をつき始めました。でも餅つきはお年寄りには骨の折れる仕事でした。
タヌキはあることを思いつきました。タヌキはやさしい声で言いました。
「親切なおばあさん、さぞかし疲れたでしょう? ぼくを放してくれたら、餅つきを手伝いますよ」
初めのうちおばあさんは言いました。
「ありがとよ。でも手伝いはいらないよ」
それでもタヌキは何度も何度も手伝いますよ、と言い続けました。
タヌキはこんなことまで言いました。
「おばあさんの力になりたいのです。餅つきが終わったら、またぼくを縛り上げればいいんですよ」
とうとうおばあさんはタヌキを放してしまいました。タヌキは言いました。
「ありがとう。さあ、餅つきを手伝いますよ」
タヌキは杵を持ち上げ、突然おばあさんを殴りました。かわいそうなおばあさんは倒れ込み、亡くなってしまいました。タヌキは森へ帰っていきました。
家に帰ってきたおじいさんは、おばあさんを見つけて泣き続けました。
数日後、親切なウサギがおじいさんを訪ねて来ました。ウサギはおじいさんとおばあさんの友だちでした。
ウサギはおばあさんが亡くなったと知ってたいへん悲しみました。ウサギは言いました。
「おばあさんはやさしい人でした。タヌキがもう二度と人を傷つけることがないようにしますよ」
翌日、ウサギはタヌキの家に行って言いました。
「タヌキくん、いいお天気だね。いっしょに山に行ってたきぎを集めようよ」
ウサギはタヌキに微笑みかけると、タヌキもウサギに微笑み返しました。タヌキにはウサギの計画がわかっていませんでした…
おばあさんが亡くなるって衝撃的すぎますよ…ね。