エンジョイ・シンプル・イングリッシュ
かちかち山 後編
かちかち山 後編
昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
悪いタヌキはいつも畑の野菜を食べてしまいました。
ある日、おじいさんはタヌキを捕まえて、縄で縛って家に帰りました。しかし、おじいさんの留守に、タヌキはおばあさんを殺してしまいました。
おじいさんはたいそう悲しみ、そのことを友だちのウサギに話しました。ウサギは何とかしようと決意し、タヌキをたきぎ拾いに誘いました。
ウサギとタヌキはたきぎをたくさん集めると、背中に背負いました。タヌキはウサギの前を歩き始めました。
川沿いを歩いていると、タヌキは何か聞こえたので言いました。
「ウサギくん、カチカチって音が聞こえるかい? 何だろう?」
ウサギは言いました。
「わからないな。たぶん、カチカチ山のカチカチ鳥が鳴いているんだろう」
けれども本当は、ウサギが石で火を起こそうとしている音でした。
しばらくすると、タヌキの背負ったたきぎが燃え始めました。タヌキは尋ねました。
「ウサギくん、なんか焦げ臭いよね?」
ウサギは答えました。
「カチカチ鳥のにおいだよ」
そしてタヌキの背負ったたきぎ全部に火が回りました。
「おお、おお、熱いよー!」
タヌキは走って川に飛び込んだものの、背中にひどいやけどを負ってしまいました。
次の日、ウサギは家でみそを作っていました。そこへタヌキがやってきて言いました。
「昨日はひどい目に遭ったよ」
ウサギは言いました。
「ああ、そうだったね。背中はどうだい? やけどに効くいい薬があるんだけど」
ウサギはタヌキの背中にみそを塗りました。
しかし、みそには唐辛子が入っていました。タヌキは泣きながら家に帰りました。
「おお、おお、痛いよー!」
数日後、ウサギは海辺で木の舟を作っていました。タヌキが立ち止まって見ていたので、ウサギは言いました。
「海に魚をとりに行くんだよ。いっしょに行くかい?」
タヌキは言いました。
「もちろん行くよ!」
ウサギは言いました。
「ぼくの舟は小さいから、きみも舟を作らないかい? 土を掘って泥の舟を作るといいよ」
タヌキは一生懸命、泥の舟を作りました。そしてウサギとタヌキはそれぞれの舟で海に漕ぎ出しました。
しばらくすると、タヌキの舟が崩れてきました。タヌキは大声を上げました。
「たいへんだー!」
でも、遅すぎました。タヌキは泥の舟とともに海に沈んでいきました。
ウサギは言いました。
「これでもう二度と人を傷つけることはない」
タヌキは海の底へ沈み、二度と姿を現すことはありませんでした。
めでたし、めでたし。でいいのかな? 子どものころ「よろこんでいいのかな…。おばあさんは帰ってこないけど…」と思ったものでした。