エンジョイ・シンプル・イングリッシュ
ふるやのもり
ふるやのもり
むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。二人はとても古い家に住んでいました。雨が降るたび、屋根にしみ込んだ雨水が家の中に落ちてきました。
ある雨の夜、泥棒が老夫婦の家にやってきました。
「この家の馬を盗んでやろう」
泥棒は屋根に上がりました。
同じころ、オオカミも来ていました。
「この家の馬を食ってやろう」
泥棒はオオカミがそこにいるのを知りませんでした。オオカミも泥棒がそこに来ているのを知りませんでした。ただ、どちらもおじいさんとおばあさんの話は聞いていました。
「一番おそろしいものは何じゃ?」
「うーん、泥棒がおそろしいわ。なんでも持っていってしまうから」
泥棒は、自分がそんなにおそれられていると知って、うれしくなってニヤリとしました。
屋根の下、家の中でおじいさんは言いました。
「わしもそう思うんじゃが、わしはオオカミの方がおそろしいわい」
「その通りじゃ! オオカミは命まで持っていってしまう!」
今度はオオカミがニヤリとする番でした。そんなにおそれられていることを知ってうれしくなりました。
おじいさんはさらに言いました。
「でも、わしが本当におそろしいのは、ふるやのもりじゃ!」
「そうじゃ! ふるやのもりは、泥棒より、オオカミよりおそろしい。今夜はふるやのもりを用心せんといかん」
「ふるや」とは「古い家」、「もり」とは「雨漏り」で、家に入ってくる雨水のことです。つまり老夫婦は、古い家の中に落ちてくる雨水こそ本当におそろしいと話していたのです。
けれども、泥棒もオオカミも「ふるやのもり」が何であるか知りませんでした。ですから、本当にあぶないものが、まもなくこの家にやってくるのだと思いました。
泥棒は家に帰ろうと、急いで屋根から降りようとして落っこちてしまいました。落ちたのはちょうどオオカミの背中でした。急に背中に何か落ちてきて、オオカミはとてもこわくなりました。
「たいへんだ、これはふるやのもりにちがいない!」
オオカミは走って森に帰りました。
運よく「ふるやのもり」はオオカミの背中から落ちて、りんごの木の横の穴に落っこちました。
もちろん、それは「ふるやのもり」ではなく、泥棒でした。泥棒はよじ登って穴から出ようとしましたが、穴は深すぎました。
オオカミはうちまでずっと走り、友だちに「ふるやのもり」の話をしました。
友だちの一人はサルでした。サルは言いました。
「ふるやのもりを見てみたいな」
サルはりんごの木の横の穴に行きました。それから長いしっぽを穴の中にたらしました。
泥棒はずっと穴の中にいましたが、縄のような長いものが下りてきたのを見て、とても喜びました。泥棒はすぐにサルのしっぽをつかみ、よじ登ろうと引っぱりました。
サルはびっくりして逃げようとしましたが、逃げられませんでした。両者とも引っぱり続けるので、しまいにはサルのしっぽが真っ二つに切れてしまいました。
そういうわけで、日本のサルはしっぽが短いということです。
ふるやのもり。子どものころに読んで、「よくできた話だなー」と思いました。でも、サルのくだりはすっかり忘れていました!