エンジョイ・シンプル・イングリッシュ
『枕草子』第4話部
世の中で憂鬱になるもの
多くの人たちは、憎まれたくないだろう。他の人とちょっと違うような人でさえ、嫌われたくはないものだ。しかし、人は好かれるか嫌われるかのどちらかになるのが自然だ。この差は、職場でも家族の間でさえも常にある。悲しいことである。
親から愛情を受けた子どもは、他の人からも愛情を得られる。高貴な家の出であればなおさらである。しかし、卑しい家の出でもまた真実である。
美しい子どもを持つと、親は愛さずにはいられない。また、わが子に特別なものが何もないと、親はこう思う。
「この子は誰にも愛されないかもしれないから、自分たちができるだけたくさん愛情をかけてやろう」と。
愛されるということは、何よりもすばらしいことである。親から、お仕えする人から、近しい人から愛される。どこからきた愛情であるかは重要ではない。
男は謎
男の考えることは、まったく謎である。美しい女性と別れ、醜い女と結婚する。私には理解できない。宮廷に出入りする男は、あまたの美しい女性の中から選ぶことができるし、愛されもする。女性が高貴な家の出であるかは関係ない。男がその女性が一番よいと思えば、末永く愛するのだ。
一般的に、会ったことがなくとも、男は美しいと言われる女性と結婚したいらしい。しかしながら、私たちの目からすると、男はどうして魅力のない女を愛するのだろう?
顔立ち美しく、心根もよい多くの女性たちが男に文を送ったのを見てきた。見事な文字を書き、すばらしい歌を詠む。
ときに女性は文の中で恨み言を言ったりする。しかし男は空約束を書いてよこすだけである。
こういう女性たちを忘れて、別の女性の後を追う男たちを見ると不愉快だ。こんなことはよくないと誰でもわかっている。
しかし、自分がやっているとき、男たちはまったくわかっていない。男は、女性をどれほど苦しめているのか理解できないのだ。
誰かの悪口を聞いたとき
理解しがたいのは、他人の悪口を言っているのを聞いて腹を立てる人たちだ。悪口はとまらないものだ。
自分のことでない限り、他人の悪口なんてとめられるはずがない。やってはいけないことだとわかっていても。
たいていの場合、言われた人の耳に入って、憎まれるようになる。だから、他人のことを言うのは無駄なことだ。もし、あなたの好きな人だったら、「気の毒だなぁ」と自分だけで思えばよい。自分の中にしまっておくようにする。
そうでない場合は、うわさ話をして、笑うまでである。
最後は、学校では教えてくれない『枕草子』でした。宮仕えってたいへんだった?