エンジョイ・シンプル・イングリッシュ
日本の伝統笑い!落語
『親子酒』
江戸のあるところに、父親と息子が住んでいました。二人ともお酒が大好きで、よく酔っぱらっていました。
しかし、ある日父親は考えました。飲みすぎは息子にとってよくないと。そこで二人とも、もう酒は飲まないと約束しました。
ある寒い日の夕方。父親が仕事から帰ってきました。
「おい、今日は何か熱い飲み物がほしいな。外はすごく寒いんだ」
「わかったわ。熱いお茶はどう?」
「熱いお茶だって? 熱くてうまい酒がいいな」
「でも息子と約束したでしょ、もうお酒は飲まないって」
「わかってるよ。でもあいつは今いないんだから。飲んだってわからないよ。ちょっと飲んだら寝ちまうから。そうだ、この湯飲みで飲もう。そうすれば酒じゃなくてお茶を飲んでたと思うだろう。ハハハ」
「ばかな考えだね。お酒がほしいなら自分でつぎなよ」
そう言って、妻は部屋を出ていきました。
父親はお酒を湯飲み茶わんに注ぎました。
「やあ、酒よ、久しぶりだな。ああ、うまい。おお、もう飲んじまった。もっと注ごう、ハハハ」
父親は飲み続けました。しばらくすると酔っぱらってしまいました。そこへ妻が部屋に戻ってきました。
「ちょいと、もうすぐ息子が帰って来るよ。もうお酒はいい加減にして、寝ておくれ」
「大丈夫だって。酒飲んでたなんてバレないよ、湯飲みで飲んでたから」
突然戸口が開いて、息子が帰ってきました。二人は慌ててお酒を隠しました。息子が部屋に入ってきました。
「やあ、息子のお帰りだぞ」
どういうわけか、息子も大いに酔っぱらっていました。
「おい、酒を飲んだのか?」
「そうだよ、父さん。父さんの友だちに会いに行って、仕事の話をしてたのさ。そうしろって言っだろ?」
「は?言ったっけ?」
「そうだよ。父さんの友だちがいっぱい酒を飲むから、おれは酒を飲まないと父さんと約束したんだって言ったのさ。おれが約束をちゃんと守っていると知って、おれのこと、いい息子だ、お祝いしようってなったのさ」
「だから酔ってるんだな」
「そうさ。父さんの友だちだから断れなかったんだよ。大きな瓶2本も空けてたよ。ああ、酒はうまいねー」
「このばか息子!約束を守らないなんて悪いやつだ」
「でも、友だちのところへ行けっていったの父さんだぜ。あれ、父さん、酔ってるのかい?」
「まさか!酔ってなんかいないよ」
けんかになりました。
「お前、頭が二つもあって、まるでばけものだな!おれが死んでも、この家はお前みたいなばけものにはやらんぞ!」
「ふん、こんな家なんかいらないね!動いているじゃねえか」
「なんだって?」
「この家、ぐるぐる回ってるじゃねえか。うわぁ、倒れそうだ」
しょーもな。