エンジョイ・シンプル・イングリッシュ
オリジナル・ショート・ストーリー
『新生活』A New Beginning
不動産屋「いらっしゃいませ。三軒茶屋不動産へようこそ」
学生「こんにちは。学生なんですけど、お部屋を探しているんです」
不「どんなお部屋をお探しですか?」
学「小さい部屋がいいんです。でも、駅から徒歩5分以内で。お風呂とトイレは別がいいです」
不「そのようなお部屋が見つかると思いますよ」
学「あと、まだいくつか条件があって…。ドアはオートロックがいいです。それから日当たりがよくて、新しい建物がいいです」
不「えっと、ご予算は?」
学「6万5千円で」
不「三軒茶屋で、ですか? ご存知の通り、東京でもっとも人気のある場所の一つですよ」
学「いえ、知りませんでした。ここでそういうお部屋を探すのは無理ですか?」
不「そういうのありますけど、すごく高いですよ」
学「いくらくらいですか?」
不「そういう部屋は、この辺りですと、14万から15万円くらいですね」
学「そんなに高いんですか!」
不「いくつか条件を見直しましょうか」
学「たとえば?」
不「えっと、他の駅にするとか」
学「安くなりますか?」
不「はい、かなり」
学「わかりました…」
不「では、一番譲れない条件は何ですか?」
学「全部です」
不「そう、ですよね。でも、決めましょう、どれか一つ」
学「一つだけ?じゃあ、日当たりかな」
不「ほう!」
学「えっ?なんでそんなに驚くんですか?」
不「あ、すいません。ほとんどの客さんは、バス・トイレ別とか、オートロックとかを選ぶので。日当たりっておっしゃる方はあまりいないんですよ」
学「ああ、そうですか。私、家のまわりは田んぼだったので、日当たりがよくない部屋には住めないんです」
不「ああ、僕もですよ。僕が東京で最初に住んだところは、ほとんど日が当たらなくて、すぐ引っ越しました」
学「まあ、私と似ていますね」
不「ご出身はどちらですか?」
学「新潟県の魚沼市です」
不「えっ?僕もですよ」
学「えーっ!高校はどちらでした?」
不「堀内です」
学「えーっ!信じられない!私、堀内高校を3月に卒業したんです。私の先輩ですね」
不「ハハハ、奇跡ですね。後輩のためにいい部屋を探してあげましょう。では、どうして三軒茶屋に住みたいんですか?」
学「私、声優になりたくて、その学校がここにあるんです」
不「わかりました。では、このお部屋はどうでしょう?三軒茶屋からちょっと先の駅です」
学「電車でどれくらいですか?」
不「だいたい15分位です。部屋は2階なので、人が入ってくる心配はありませんよ。新しい建物ではありませんが、築8年です。バス・トイレは別ではありませんが、日当たりはとてもいい部屋です」
学「まあ、すてき。家賃を聞くのがこわいんですけど」
不「6万3千円です」
学「まあ!今日見れますか?」
不「もちろん!見に行きましょう。さあ、後輩、ついてきなさい」
お部屋探し、楽しくもあり、現実は厳しくもあり。人生いろいろ、お部屋もいろいろ。