エンジョイ・シンプル・イングリッシュ
『枕草子』第3部
胸が苦しくなるもの
胸が苦しくなるもの。競馬。
髪に元結をつけるとき。具合が悪いと親が言い、いつもと違って見えるとき。ますます胸は苦しくなる。疫病が流行って、どうすることもできないとき。または、小さな赤子が火のついたように泣いて、乳を飲まないとき。乳母が抱いてもどうにもならないとき、さらに胸が苦しくなる。
知られていない、愛しい人の声を聞くとき。とくに、思いもしなかったところでその声を聞くとき。また、その人のうわさを聞くとき。胸はますます苦しくなる。また、気に入らない人がやってきたとき。胸は苦しくなる。胸とはそういうものである。
また、昨晩の愛しい人から朝遅くになって文が来たとき時。自分のことではなくとも、胸が苦しくなる。
かわいらしいもの
かわいらしいもの。ウリに描かれた子どもの顔。鳴きまねをするとチョンチョン近づいてくる小鳥。または、素早く這っていた赤子が、急に何かを見つけて止まる。小さなゴミなのだが、赤子はそれを小さなふっくらとした指で拾って、大人に見せる。これらのしぐさはかわいらしい。
または、目のところまで垂らした前髪の子どもが、首をかしげ、髪を払いのけない。子どもは髪の毛越しに見ている。かわいらしいものだ。
また、高貴な家の子どもが美しい着物を着て歩いている様子。また、抱かれてすやすや眠る美しい顔の赤子。これらもかわいらしいものだ。
人形用の小さな卓と椅子。池から摘んできた蓮の葉。またはいろいろな草木のとても小さい葉。小さいものはすべてかわいらしい。
太った2才の子ども。長い着物を着て白い顔を部屋から出している。袖はたすきで後ろに留められている。
または、丈は短く、袖の長すぎる着物を着て歩き回る子どもたち。かわいらしいものだ。八つか九つか十くらいの年の男の子が、子どもらしい高い声で書物を読み上げている様子。
または、人の近くを歩く鶏のヒナが鳴いているさま。長い足と白い羽根を見ると、着物姿の女性を思い出す。母親の鶏といっしょに走ってくるのはかわいらしく見える。アヒルの卵。ガラスの壺。
日本の古典文学→英語→現代語訳…いと、あじけなし。
来月のテキスト買ったら、中島敦の『山月記』‼!これ、けっこう好きです!