エンジョイ・シンプル・イングリッシュ
オリジナル・ショート・ストーリー
『ルール』
颯太「美咲、あの人たちを見て!まだ試合が始まってないのに、あんなにたくさんの人がいる」
美咲「颯太、野球場に来たのは初めてなの?」
颯「うん、実は、テレビで野球を見たこともないんだ。うちの親はニュースしか見せてくれないから」
美「本当?」
颯「うん、本当だよ」
美「そうなんだ、わかった」
颯「どうしたの、美咲?」
美「野球のルールは知ってるの?」
颯「もちろん、ルールは知ってるよ。小学校で、1,2回やったからね」
美「よかった、ちょっと心配になっちゃって」
颯「ピッチャーがボールを投げる。バッターが打つ」
美「そうよ、それから?」
颯「バッターが走る」
美「それから?」
颯「それだけ。それを何回もやるんだ」
美「何回?」
颯「えーっと、チームのみんなが一周するまで。そして、相手チームの番だ」
美「ふざけてるの?ルール、全然わかってないじゃない?」
颯「うーん、スポーツはあまり好きじゃないんだ」
美「どうしてもっと早く言ってくれないの?野球が好きじゃないなんて知らなかったわ」
颯「誘ってくれたのがうれしくて…。美咲が野球が好きなの知ってるから。美咲がハッピーだとぼくもハッピーなんだ」
美「ああ、今ハッピーじゃないわ。私と見に来るなら、ルールはわかってないとね」
颯「ごめん、美咲。ルールを教えてよ」
美「わかったわ。試合が始まるまであと15分あるから、ルールを全部教えてあげる。しっかり聞いてよ!」
颯「うん」
* * *
美「さ、これでわかったでしょ?」
颯「うん。スリ―アウトになったらチェンジ。9回まであって、得点の多い方が勝ち、だよね?」
美「完璧よ!さ、試合がはじまるわよ」
* * *
颯「美咲、戻ったよー。うどん買ってきた」
美「ありがとう、颯太。ちょうどいいところに帰って来たわよ。次のバッターがホームランを打てば勝ちだわ。颯太、ワクワクしない?」
颯「よし、食べよう」
美「今はダメよ」
颯「でも、冷めちゃうよ」
美「わかった。美味しいわね。ちょっとー、今のストライクじゃなかったわよ!」
颯「美咲、今は試合を見ちゃダメだよ。ぼくを見なきゃ」
美「は?なんで?」
颯「ぼくたちのルール忘れちゃったの?食事中は、お互いを見るって約束しただろう?」
美「颯太、何言ってるの?」
颯「この前、美咲、ぼくに怒っただろう?夕食の時、ぼくが食べながらスマホをいじってたら、美咲言ったじゃん、お互いを見て、他のことはしないって」
美「ああ、あのルールかぁ…でも、今野球場だし」
颯「ルールを破ったら別れるって言ったよね?」
(カキーン)
美「あ、なに?」
颯「美咲、ルールを忘れるなよ!」
美「颯太ー!!!」
野球はいいですよねー。ルールも知らないなんて残念すぎる(かるくイラッとする⁉)