タンザニア
フジャンボ! いかがお過ごしですか?
ここでクイズです。私の国は何でしょう?
東アフリカにある国です。アフリカ最高峰のキリマンジャロがあり、アフリカ最大の淡水湖ビクトリア湖があります。バンド、クィーンのフレディ・マーキュリー生誕の国です。時間です! 私はタンザニア連合共和国です!
国土は日本の2.5倍、首都はかつてはダルエスサラームでしたが、現在はドドマです。人口は5,500万人で、130の部族から構成されています。今日はある一つの部族についてお話しましょう。
ハッザ族という部族です。
現在ハッザ族は1,000人ほどしかいないと言われています。特色は、農耕を行わないことです。空腹になると、男性は動物や鳥の狩りに行き、女性は木の実や野生のイモを採ります。
ハッザ族は、集団でこの国の北東部に暮らしています。
話すときは、ときどき舌を使ってカチッという音を立てます。
暦はありません。今日と明日とあさってという言葉があるだけで、他にはありません。日の出とともに狩りに出かけ、夜になると眠ります。
おっと、それからたいへん独特なやり方で人を見つけます。人を探すときは、地面の足跡を見ます。どうして、ですか? それは、一人一人がサンダルの裏に自分の印を彫っているので、足跡を見ることで誰がどこへ行ったかわかるのです!
ハッザ族の暮らしは、都市に住む人たちとは異なります。他のアパートや家に引っ越すとき、荷物を全部入れるのに箱はいくつ必要ですか? たくさん要りますよね?
でも、ハッザ族の人たちは、たった一枚の毛布があれば持ち物が運べてしまいます。包むものは、弓矢、乾物、衣類、なべ、スプーンなどで、好きなときに引っ越します。かなり頻繁に引っ越します。ときには1年に6回も引っ越します。
引っ越しをするのは、狩りのための動物を見つけたり、木の実の採取により適した場所に移るためです。
観光客の集団がやってくることもあるので、ハッザ族は現代的な暮らしのことも知っています。でも
「ハッザ族には、ハッザ族の暮らし方がある」
と言います。
自分たちの暮らし方に価値を置き、1万年もほとんど変わっていません。
ハッザ族は変わらなくても、周囲の環境は変わってきました。他の部族が、伝統的なハッザ族の狩猟地で農耕を始めたり、家畜を飼いだしたのです。ハッザ族の食料が少なくなっています。
私の国についてお話したいことはまだたくさんあります。
ぜひいらして、サファリや目を見張るような景色、美しい海岸、さまざまな素晴らしい文化をお楽しみください。お待ちしています!
ハッザ族は究極のミニマリスト!しかも周囲に流されない!どっちも私には難しいことです。
ルーマニア
ブナ・ズィワ。こんにちは。私はルーマニアです。ラテン語族が建国しました。ヨーロッパの南東部にあります。私の国を囲んでいるのは、黒海と5つの国々、セルビア、ハンガリー、ウクライナ、モルドバ、ブルガリアです。
大きさは日本の本州くらいで、人口は2千万人弱です。首都ブカレストをご存知ですか? 美しい街で、かつては小パリと呼ばれていました。
トランシルベニアのドラキュラ伝説でこの国をお知りになったのかもしれませんね。
そのような伝説の生き物についての古い民話がたくさんあります。でも、ヴァンパイアの物語が有名になったのは、アイルランドの作家がドラキュラの本を書いてからでした。
また、神秘的な滝と動く石でも有名です。
お話したい場所はたくさんあるのですが、その中のひとつ、『陽気な墓地』についてお話しましょう。
お聞きの通り、墓地だからといって陰気だったり、悲しかったりする必要はありません。陽気な場所にもなれるのです。すぐにわかりますよ。では、お聞きください。
陽気な墓地は、伝統的な小さな村サパンタにあります。毎年3万人ほどがここを訪れます。観光客のお目当ては、お墓に建てられた色とりどりの、美しく彫刻された十字架です。
十字架はあざやかな青で、それぞれ細やかに色付けされていて、亡くなった方についての独自の詩が書かれています。詩を読めば、その人がどんな人生を送ったかがわかります。
村の誰かが亡くなると、家族は十字架を作るよう美術職人に依頼します。詩は一人称の形式で書かれます。まるで亡くなった人が話しかけてくるようです。たとえばこんなふうに。
「酒が飲みたいと思っていたら、女房が出ていった。だからもっと飲んだんだ。ちょっと酒を置いて行ってくれないか?」
「妹をあとに遺して早死にするのは、運命だったんだ。どうか妹(シスター)よ、命ある限り、私の墓の世話をしておくれ」
詩はこの村の伝統から来ています。高位の聖職者は、亡くなった人についての歌を書いてきました。歌の内容は、その人の実際の人生と、まわりの人たちへの感謝、そして過ちに対しての謝罪です。
この歌もまた一人称形式で書かれていて、亡き骸を墓地に運ぶ道中に歌われます。
サパンタの人々は、死は終わりではなく、新しい人生の晴れやかな門出だと信じています。
いつかご自身の歌を書いてみてはいかがですか? 人生を見つめ直すきっかけとなるでしょう。生きているうちに人生を謳歌しましょう。そして生きているうちにぜひ、私の国にお越しくださいね!
訳していて気になったのが『動く石』です。ネットで検索すると、成長する石、動く石などと出てきました。びっくりです!
ミクロネシア
みなさん、こんにちは。私はミクロネシア連邦です。西太平洋にある607の島々からなる国です。
どこにあるかわかりますか? では、社会科の時間です。地図をごらんください。まずオーストラリアを見つけてください。北に行くとパプアニューギニアが見えますね? それからもうちょっと北へ行ってから、東に行きます。そこが私の国です。
首都はポンペイ島にあるパリキールです。公用語は英語ですが、8つのおもな現地語もあります。
全部の島の面積を合わせると、奄美大島くらいになります。この国の島々には面白いものがたくさんありますよ。たとえば、人の大きさほどの巨大な石の硬貨です!
今日は島の一つ、プンナップ島についてお話します。
山のない平らな島で、1周歩いて回っても40分ほどです。ここに住む人は300人ほどで、たいへん質素に暮らしています。
電気、電話回線、水道もありません。プンナップ島では携帯電話も使えません。でもここでは、美しい広い海と果てしない青空がみなさんをお迎えします。
島の名前は「航海術誕生の地」という意味です。
ここに暮らす人々は、昔ながらの方法で航海することのできる最後の人たちと言われています。
この航海術の達人はカヌーで海を渡ります。モーター・エンジンにたよらず、風だけを利用します。行く先を知るコンパスなどは使いません。
昼間は、波の形状を読み、鳥を観察し、風を感じ取ります。夜は、星座と風向きを手がかりに暗い海を進みます。カヌーの速度は時速20kmです。
1975年には、6人の航海士がこの方法でミクロネシアから沖縄まで3,000kmを航海しました。かかった日数は47日。本当に驚くべき船乗りたちですね。
月に一度、島の男性は全員で漁に出ます。
水深12メートルのところに大きな網を仕掛け、一度に大量の魚を捕まえます。漁のリーダーが網を仕掛ける場所や、魚を網に追い込むタイミングを決めます。
それから魚を島に持ち帰って、みんなに平等に配ります。その場にいれば、みなさんもひとつ分けてもらえるでしょう。
プンナップ島の人たちは、自分たちの航海術に誇りを持っています。私も、この伝統を受け継いでいる人々を誇らしく思います。
熱帯の島でくつろいだり、海に出て潮風を感じたくなったら、ぜひ私の国を思い出してください。
夜は星座と風向きを手がかりに暗い海を進む!!
昼も夜も、ナビと検索をたよりに生きる私…。
チリ
ムチョ・グースト!初めまして!ずっと私の国を見ていたくなるでしょ?わかりますよ。みなさん、この国の細長い形に興味があるんですね。まあ、お座りください。この国のお話をしますから。
私はチリ共和国です。首都はサンティアゴで、人口は約1,800万人です。
隣国は、ペルー、ボリビア、アルゼンチンです。西は大西洋に面しています。ごらんの通り、たいへん細長いのですが、どれくらい長いか想像つきますか? 答えは、4,329km、日本の約2倍です。
アンデス山脈の美しい風景にうっとりするかもしれませんよ。世界で一番長い山脈なのです。
アマゾンの熱帯雨林からの湿った空気はアンデス山脈を越えることができず、海水は冷たいので大気中に上昇する水蒸気はほとんどありません。この二つの要因で、雲ができません。雲がなければ雨も降りません。
そういうわけで、ここには地球上で一番乾燥した場所、アタカマ砂漠があるのです。
アタカマ砂漠は北海道より少し小さいくらいで、年間降水量は10㎜以下です。1年で10㎜ですよ、1日じゃなくて! 40年以上も雨が降っていないところもあると言われています。想像できますか?
でも、そんなところにもオアシスはあります。オアシスとは、砂漠に植物があるところです。アタカマ砂漠では、植物は一番長い川のロア川から水を得ています。ロア川の水は、アンデス山脈の雪解け水です。すべてはつながっているんですね。
最近、川の水位が下がってきています。原因の一つは、銅山で大量の水が使われているためです。チリは世界最大の銅の産出国なのです。
銅はこの国の経済にとって重要ですが、水もまた重要です。川の水がなければ、人々は生きていけません。ですから、ゴーストタウンになってしまったところもあるのです。ほかの町も困難に直面しています。
一人の老人が言いました。
「土地を大切にケアし続けなければいけない。そうしないと完全な荒地になってしまう」
この国の土地を大切に扱ってくれてありがとうございます!
最後に、夜空についてお話しましょう。
アタカマ砂漠では、星座の南十字星がとてもくっきり見えるのです。砂漠の中には、標高2,000メートルを超える高地もあって、空気がとても乾燥しています。ですから星がきれいに見えるのです。
目の覚めるような青空と、満天の星空を見たいなら、いつか遊びにいらしてください。チリのことが大好きになるでしょう。ではまた!
チリでも川の水位が下がっているのですね。先月のヨルダンの死海にそそぐ川もそうでした。どうすればいいのでしょう。
本文に「すべてはつながっているんですね」とあるので、私はここ日本で、自分にできることをします。ささやかなことでも「つながっている」かもしれないので。